キオクノオト

記憶の音 ~ 好きだった人。好きな人。好きになってくれた人。

ホワイトデーに

この日彼は本社で支店長会議。

その数日前に

『会議が終わったらそちらに行こうかなと思ってる。

また一緒に飲みませんか?』

と連絡が入った。

 

『先日のお返しに、美味しい焼き肉でも食べに行きましょう』

 

前回会った時にちょっと早いかなと思ったけど

日頃のお礼にとバレンタインのチョコを渡していた。

来月絶対にホワイトデーのお返しをするからと言っていたので

そのために来てくれるらしい。

 

わたしの住んでいる地域に、人気の焼肉屋がある。

そこに行きたいというので予約した。

仕事が終わって、彼の宿泊先に迎えに行く。

そこから二人で歩いて向かう中

『どっかで(わたしの)同僚にあったらビックリだな』

なんて言う。

そうか、わたしそこまで考えてなかった・・・

ちょっとしたスリルだ。

 

わたしは自分で肉を焼かない。

わたしには変なこだわりがあって、

『肉は男性が焼くもの』だと思っている。

男性と焼肉に行って、最初から最後まで焼いてくれる人なら

恋愛対象になる(全員が・・・というわけではないが)

わたしに焼かせる人はいいトコ友達止まりかな・・・という(笑)

そんなヘンテコなこだわり。

 

彼は丁寧に肉を焼く。

一番美味しく焼けたところをわたしに取ってくれる。

わたしの変なこだわりは明かしてないのに

肉は自分が焼くというのが当たり前のような振る舞い。

 

来月から彼は営業兼務を卒業して、支店長職専任になることが決まったそうだ。

今のままいけば数年後には本社、そしてその後は順調に上にあがっていくようだ。

 

『いつか・・・自分の希望が叶うなら、ariesさんと一緒の部署で働きたい』

 

彼はそう言ってくれる。

いずれ彼は人事に関する権限を持つようになるだろう。

 

『俺たちは同志だから』

 

聴き慣れたこの言葉を言う。

 

だけど、この言葉の裏には仕事云々より

いつでも近くに居たいという願望が入っているようで

だったらわたしはノーサンキューなのだ。

 

近くにいると、見たくないものまで見えてしまうよ。