キオクノオト

記憶の音 ~ 好きだった人。好きな人。好きになってくれた人。

見られた?

二人でご飯を食べに行った。

わたし達を知っている人が来ないであろう店、

この日は誰も出歩かないだろうと思ってた日。

 

お店は空いていた。

二人で乾杯をして、近況報告をしていた。

 

パーテーションの向こうに誰かお客さんが来たようだ。

ふと視線をそちらに向けると

「え・・・」

 

会社の人だった。

 

二人で静かにパニックになる。

 

まだ気づかれてはいないようだ。

 

これからどんどんオーダーしたものが運ばれてくる。

その時にむこうの席からこちらの様子が見えてしまうかもしれない。

 

「こんなことってある?」「嘘でしょ?」

声を潜めながらも焦ってしまう。

 

彼がふと隙間から向こうの様子を見ると、いなくなってる。

 

「絶対気付かれて席を変えたか、帰ったかだよな」

彼の顔にも少し焦りが見える。

 

お店の人が飲み物を持ってきたときに

「向かいの席の人たちは帰ったんですか?」

と小声で聞いてみる。

 

「いえ、別の席に移りました」

 

あぁ、バレたか。

 

「もし奥の個室が空いていたら移動したいんですが」

 

わたし達はそっと席を移動する。

 

あとでお店の人に、あの人たちが自主的に席を移動したのか聞いてみたら

「いえ、なにか(こちらの)様子がお変わりになったので

向こうのお客様には別の席をご用意しました」

と。

 

どうやらなにかを察したらしく、機転をきかせてくれたようだ。

 

でもきっと見られていたと思う。

わたしはそこまで強運の持ち主じゃないから。