キオクノオト

記憶の音 ~ 好きだった人。好きな人。好きになってくれた人。

まだ9回裏じゃない

彼は自分にも他人にも厳しい。

だからこそ、常に注目される営業マンになったし、

とんとん拍子に出世して、営業をしながら部下をマネジメントする

立場になった。

 

3月。

営業マンにとって1年の集大成の時期だ。

1年を通してどれだけ売り上げをあげることが出来るか、

数字で管理されて表彰される。

彼の場合は他の営業マンと違って、支店の管理も任されているので

営業活動に費やす時間も限られている。

自分の成績のほか、部下の指導や支店の運営にも時間を使わなければならない。

 

今のところ個人成績は社内で2位。

1位にはけっこう差をつけられているようだ。

こんな時は愚痴のひとつも言いたくなるだろう、と思っていたら

 全く言わない。

それどころか、ちょっと営業成績が思うように伸びないときでも

『まだ9回裏じゃないから。諦めない』

 

『絶対1位になって、表彰台からariesさんにメッセージを送ります』

 

表彰された人はマイクを向けられ、なにかひと言言わなければいけないのだ。

そこでわたしにしか伝わらないメッセージを言うとのこと。

 

自分は有言実行男だと普段から言ってる彼は

今、目標に向かって頑張っている。

わたしはそんな彼のことをとても尊敬している。