キオクノオト

記憶の音 ~ 好きだった人。好きな人。好きになってくれた人。

彼の支店で

ちょっとした問題が起きたようだ。

前から彼、そして彼の支店の女性から別々にその問題について

聞かされてはいたけど、グレーゾーンの話だったので

なんとなくしか教えてもらってはいなかったのだけど、

疑惑が確信に変わったという・・・

 

やり場のない怒りを誰かに聞いてもらいたかったのだろうか。

わたしに電話がかかってきた。

口調がいつもと違って荒い。

 

問題児の部下を抱えて、グレーがクロに変わって。

元々信頼関係はなかったと言っているが、

こんな結末を迎えて、本当に悔しかったんだろう。

 

愚痴ってごめん・・・と何度も申し訳なさそうに彼は言うけど

わたしはなんとも思ってないよ。

 

4人で飲む

会議が終わったあと、彼が私の住む街に来た。

今回は二人きりで会うのではなく、わたしの支店にいる後輩を交えて

4人で飲むことになった。

 

わたしが参加するのが不自然にならないよう、

『おまえらariesさんに普段世話になってるだろ?

せっかくだから飲み会に誘ってみたら?』

と、後輩からわたしを誘うようにシナリオを作ったのだ。

 

お店に向かう前に、わたしは彼をホテルに迎えに行く。

そこから二人で歩いて向かうのだけど、

どこで誰が見ているかわからない、ちょっとしたスリル。

 

時間になり、全員が揃ったところで乾杯!

いつも彼とわたしが電話で話していることと同じような話題で盛り上がる。

『知ってるよ~』と内心思いながらも、初めて聞いたような顔をする。

ついどこかでボロが出てしまわないか、細心の注意をはらう。

そんなスリル。

 

一人帰り、3人でもう一軒に流れる。

さりげなく彼の隣に座る。

向かい合わせに座った後輩に怪しいと思われないよう、

椅子を離してちょっとした距離を取る。

 

わたしが2杯目の飲み物をオーダーした直後に

後輩の奥さんが迎えに来たようだ。

『嫁が来たからお先に~』と、後輩が言ったので

『え、じゃ飲み物キャンセルするので、お開きにしましょう』

なんて、心にもないことを言ってみる。

怪しまれないよう、まっすぐな表情を作って。

 

結局は2人で残ることになり、改めて乾杯する。

やっとふたりきりになれた。

 

 

 

電話をする理由をみつける

彼から電話がきた。

会社の話題から、だんだん脱線して昔好きだったドラマの話になる。

これが思いのほか盛り上がって、時間を忘れてしまう。

 

次の日、彼から昨晩のドラマの話題の続きでLINEが届く。

何往復かのあと、ちまちまと文字を打つのがめんどくさくなったのか

彼から電話がくる。

またドラマの話で盛り上がる。そしてちょっとだけ会社の話をする。

 

次の日、昨晩話した会社の話の件でLINEが届く。

何往復かのあと、彼から電話がくる。

会社の話題の続きを話したあと、昔はやったバラエティの話で盛り上がる。

 

次の日、昨晩したバラエティの件でLINEが届く。

やっぱりすぐ彼から彼から電話がくる。

 

「こうやって、電話する理由をみつけてかけている」

なんて言う。

「くどくてごめん。」

と笑いながら言う。

 

少しお腹いっぱいな気持ちにもなるけど

電話をする理由をなんとか絞り出してかけてくる彼のことを

なんだかかわいいなぁと思う。

 

こんな俺と・・・なんて言わないで。

彼はわたしの前では低姿勢だ。

 

仕事上ではいつもバリバリやってて、

時として権力を振りかざしているようにも見える彼。

 

なのに、わたしに対しては異常なくらい気を遣う。

わたしのほうが役職はずっと下なのに・・・。

 

先日ふたりで会った時、

「俺、その場にいた人たちみんなに自慢したかったもんね。

どーだ!すごいだろ!って」

なんて、本気で言う。

 

いやいや、わたしはそこいらにフツーにいるおばさんですから。

彼の目にはいったいどんな風に見えてるんだろ?って

ものすごく不思議だった。

 

「こんな俺と一緒に飲みに行ってくれて」

「こんな俺の横を歩いてくれて」

 

そういうふうに言わないで。

 

わたしが一緒に居たくて、一緒に並んで歩きたかったんだから。

 

 

 

秋の始まりに二人で会う

先日、彼と久々に会った。

会議の日に絡めて前泊でわたしに会いに来てくれた。

 

彼が宿泊するホテルのロビーで待ち合わせ。

ソファに座っているわたしを見て、彼は手を上げる。

わたしも彼に気付いて手を振る。

 

一軒目。

美味しい料理を出すという小料理屋に行く。

彼が前に上司に連れて行ってもらったお店だというところ。

 

二軒目。

生フルーツを使ったカクテルを出すお店に行く。

わたしが以前同僚と行って、お気に入りのお店。

 

明日は会議だから早めにお開きにしましょう、と言っていたのに

日付は変わっていた。

たくさん話したもんね。

わたしは彼の声を聴いていたいし、

彼もまたわたしの声を聴いていたい(らしい)から。

 

初夏の頃会って、真夏は会わなくて、そして秋の始まりに会う。

やっぱり電話で話すのとは違うね。

二人で会っていると楽しいね。

 

お金じゃない。大切なのは時間なんだ。

彼と会う時、彼は相当のお金を使っている(ような気がする)。

二人分の食事、お酒、自分の宿泊代(会議の時は会社持ちだけど)、

わたしのタクシー代・運転代行代、などなど。

気前よくポンポンと支払うもんだから、

時々申し訳ないな~と思う時もある。

 

電話で話しているときに

「わたしに対してそんなにお金使わなくていいよ」

と何回か伝えているけど

「お金の問題じゃない。大切なのはこの時間なんだ」

と必ず言う。

 

わたしと居る時間が大切でかけがえのないものだと言うなら

今度から公園で会う?水筒持参で(笑)

これ、言ってみたい。

煙たがられているようで好かれている人

彼の職場の人と飲んできた。

彼の部署にはわたしが仲良くしてもらっている同年代の女性がいて

(同年代だけど、彼女は中途入社だからわたしの後輩にあたる)

普段から仕事や人間関係の悩みや心配事を話したりしている。

 

ゆっくり飲もうよという話になり、わたしが泊りがけで行くことに。

もう一人、彼の直属の部下の男性も来ることになった。

この集まりは彼には内緒。

彼女たちはわたしが彼と個人的に連絡を取り合ってることを知らないし、

この飲み会の主旨が『彼の話題』らしいから、絶対に気付かれたくないらしい。

わたしはというと、この飲み会がバレてしまえば彼はどういう話題をしたのか

気になってしょうがなくなるかなと思い、内緒で参加。

 

話題は彼のパワハラまがいの発言など、けっこう強烈だったけど

でも話してる当の本人たちはなぜか楽しそう。

「もう俺なんていつもミサイル打たれてますから~(笑)」

「どこに隠れても狙い定めて打ってくるしね(笑)」

モノマネしながら日々の様子を再現してる。

 

煙たがられているようで、でもこの部署は彼が引っ張っているから

成り立っているということに感謝しているということが伝わってくる。

 

「人一倍努力しているすごい人だから、なんだかんだ言っても付いていこうって思うんだよね」

「あんな感じだけど、人としての魅力はあるからね」

 

自分にも他人にも厳しい人だとは感じていたけど、

ちゃんと背中を見て付いていこうと思ってくれてる人もいるんだね。

良かった。

わたしの好きな人がこんな人で良かった。