キオクノオト

記憶の音 ~ 好きだった人。好きな人。好きになってくれた人。

4人で飲む

会議が終わったあと、彼が私の住む街に来た。

今回は二人きりで会うのではなく、わたしの支店にいる後輩を交えて

4人で飲むことになった。

 

わたしが参加するのが不自然にならないよう、

『おまえらariesさんに普段世話になってるだろ?

せっかくだから飲み会に誘ってみたら?』

と、後輩からわたしを誘うようにシナリオを作ったのだ。

 

お店に向かう前に、わたしは彼をホテルに迎えに行く。

そこから二人で歩いて向かうのだけど、

どこで誰が見ているかわからない、ちょっとしたスリル。

 

時間になり、全員が揃ったところで乾杯!

いつも彼とわたしが電話で話していることと同じような話題で盛り上がる。

『知ってるよ~』と内心思いながらも、初めて聞いたような顔をする。

ついどこかでボロが出てしまわないか、細心の注意をはらう。

そんなスリル。

 

一人帰り、3人でもう一軒に流れる。

さりげなく彼の隣に座る。

向かい合わせに座った後輩に怪しいと思われないよう、

椅子を離してちょっとした距離を取る。

 

わたしが2杯目の飲み物をオーダーした直後に

後輩の奥さんが迎えに来たようだ。

『嫁が来たからお先に~』と、後輩が言ったので

『え、じゃ飲み物キャンセルするので、お開きにしましょう』

なんて、心にもないことを言ってみる。

怪しまれないよう、まっすぐな表情を作って。

 

結局は2人で残ることになり、改めて乾杯する。

やっとふたりきりになれた。