キオクノオト

記憶の音 ~ 好きだった人。好きな人。好きになってくれた人。

それ、俺ですから!

どういう流れでそうなったのかは知らないけど

彼の部下の女性(わたしが仲良くしている人)が、

仕事中の雑談で

「ariesさんって、いい人いないんですかね?」

と言ってきたらしい。

 

わたしはけっこうそのテの噂話のネタになることが多い。

モテるとかそういうのじゃなくて、

ひとりで生きていくように見えないから

周りが心配をしてくれてるようなのだ。

 

実際は全然ひとりでも平気だし、

むしろひとりのほうが気楽だと思ってるんだけど。

 

「で、それ聞いてどう思ったの?」

彼に聞いてみた。

 

「俺、その話を聞きながら『心配ご無用!』って思ってた」

「いい人?はい?それ、俺ですから!」

 

彼は酔っていると、調子のいいことばかり言う。

 

社内では黙って余計なこと言わないでね。と思う。

誰のものにもならないで

バレンタインデー。

彼は本社での会議のあと、わたしの住む街に来た。

 

二人だけで会うようになってからちょうど1年。

そういったことにこだわらないように見えて

『2月は特別な月だから』

なんて言う。

『そういうのにかこつけて、会いに行きたいだけなんですけどね』

とも言ってたけど。

 

今回、突発的な人事異動があって

わたしが苦手とする人物が、またわたしと仕事上の関りを持つことになる。

そのことを心配して、いち早くわたしに情報を届けてくれた彼。

『大丈夫。俺がバックについているから、あいつも下手なことはしてこないだろう』

 

確かにそうだ。

今までさんざんわたしに対して当たりがきつかったのに

彼とわたしが仲良く話しているところを見て以来

態度がコロリと変わった。

 

守られているんだなぁ、と思う。

 

彼は先日酔っぱらってわたしに話したことを全く憶えていない。

『こんなこと言ってましたよ~』

と、からかいたかったけど、

もしかしたら本当は憶えていて、でも照れ隠しに『憶えてない』と言っているのなら

蒸し返す必要はないかな~と。

 

突然

『ねぇariesさん。誰のものにもならないで』

 

俺のものになって。

じゃなくて、

誰のものにもならないで。

なんだね。

ついに言ったね

わたしが旅先でひとり飲みをしているときに

「今、一人で串揚げ食べて飲んでま~す」

とLINEを送ったら

「俺は今接待中」

と返信がきた。

 

仕事中なら邪魔は出来ないなと思い、LINEは中断して

ちょっと飲んでからホテルに戻った。

 

0時過ぎ、電話が鳴る。

 

そうとう酔ってるようだ。

お酒が入って気が大きくなったのか、同行した部下の前で

『俺様キャラ』が炸裂してしまったようだ。

そのことを「俺、やらかしちゃいました~!すみませんっ!」

とわたしに反省の弁を述べ始めた。

 

「俺、ariesさんがそばにいないと他人に優しくできないんですっ!」

「ariesさんと一緒にいたいんですっ!」

「ariesさんが好きなんですっ!」

連呼している。

 

「あら、かなり酔ってますね」

と言うと

「好きなんですっ!」

全くもって意味不明。

これじゃ、きっと記憶ないな。

 

「聞いてください!俺、離婚することになって~。

だから、様子見しててくださいっ!」

 

だめだ、こりゃ。

わたし、いったい何を様子見してたらいいの?

 

それよりもなによりも、彼がついに私に対して

「好き」と言ったこと、ちょっと驚いた。

 

言わないと思ってた。

優しいきもち

彼と電話で話していた時のこと。

 

ふたりで今まで何枚か撮った写真の話になった。

 

春に会社の懇親会の時に撮った写真のこと。

毎回懇親会の会場で一緒に撮っているので、雑然とした場所で写っているけど

その時は懇親会の3次会でふたりだけで写っている写真もあった。

帰りがけ、誰かが撮ってくれたものだった。

 

「あんなに酔っぱらっていたのに、すごくいい表情で撮れているんだよな。

俺ってあんな顔も出来るんだな~と思って」

 

彼は仕事中は気難しい表情をしていることが多いらしい。

笑わない男?

 

今までふたりで撮った写真もそれほど笑ってない。

ちょっと緊張感が残ったような顔。

 

だけどその時撮った写真は、笑ってはいないけど

なんだか穏やかな表情をしている。

 

「この写真を見ると、優しい気持ちになるんだよな」

 

彼はそう言う。

 

わたしはこの写真が一番好きだ。

年末年始

年末年始、わたしは旅行に出かけていて、

彼は自宅でいつも通りの毎日を過ごしていた(はず)。

 

夜になるとどちらからともなくLINEを送り、そして電話で会話をした。

今日の出来事を報告し合い、でもお互いお酒を飲んでるから

眠くなっていつもより短めの会話で終わった。

 

旅先で、いろんな風景を見ていたけど

頭の中は彼のことばかりだ。

 

ふたりだけの忘年会

今月の会議が終わったら二人で忘年会をしようと彼が言う。

先日の研修と時にはもうお店の予約はしていたが、

待ちきれなかったのか、彼は

「早く会いたい」

とLINEを送って来てくれた。

嬉しいような、ちょっとばかりの重さもあったりして

「来週会えるよ」

と、変なスタンプとともに返信しておいた。

 

「ささやかなお願い。一緒に写真を撮りたい」

前日にはそんなLINEが届いた。

毎年必ず一枚写真を撮っている。

それは会社行事の時になんだけど、

プライベートで会ってる時に写真を撮るのは初めてだ。

 

焼き肉店に行く。

お酒が入る前に・・・と何枚か撮る。

この日のスーツはとてもかっこいい。

彼によく似合っている。

 

いつもはもう一軒行くのだけれど、今回はカラオケに行った。

彼の歌を聴くのは初めてだ。

 

「俺の気持ちを歌う」

とか言ってたので、内心「ラブソングだったらど~しよ~」と思っていたが

選曲を間違ったようで、骨太なロックだった。

「は?」

 

彼はわたしに触れない。

触れちゃいけないという気持ちがあるようなのだ。

 

でもこの日は手の甲にキスされた。

なんだろう、この感じ。

 

それ以上進んではいけない。

 

研修で一緒になった

不定期に開催される社員研修があって、

わたしがそれに参加するのは久しぶりのことで

(前回参加したのは何年も前のこと)

彼には前日に

「明日わたしも参加します」

とメールを入れておいた。

 

当日、研修会場に着いたらちょうど彼の真後ろの席が空いていて

流れ的にそこに座るのが自然だったので

「お疲れ様です」

とお互い会釈をして着席した。

 

研修内容はわたしにとってそれほど興味があるものでもなく

退屈だったので、ぼーっと彼の後ろ姿を見ていた。

 

夜に電話で話した。

後ろにわたしがいて、嬉しい反面すごく緊張したそうだ。

本当は話したかったけど、周りの目が気になったから

挨拶だけでごめん・・・と。

 

いや、その程度で抑えておいたから良かったんだよ。

そのほうが自然で悪目立ちしないから。

 

来週はゆっくり会おう。